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36歳で大腸ガンと告げられた日。

by chiharu


「大腸がんです。」

他人のことのように思えた。でも一気に涙が溢れた。食事には人一倍気を使っていた私が、よりによって大腸がん。「どうして。何かの間違えだよ」頭の中はその繰り返し。すぐに医師から説明を受けるもやっぱり自分のこととは思えない。でも涙は止まらない。

初めての内視鏡検査を終え写真を見せられる。大きなグレーがかったこぶが大腸の中にくっきりと映っている。「何ですかこれ?!」と思わず声に出した。医師は少し間をあけてから、このまま話を進めて大丈夫か、今日は一人で来たのかと確認される。「大腸がんです」と。以前専門だったようで確実のようだった。手術が必要とのこと。ドラマや再現VTRでよく見る場面だなと思っておいた。いわゆる「ステージ」を聞いたが、そのことを含め、リンパまで及んでいるのかどうかも、大きな病院で検査を受けないとわからないとのこと。紹介状をもらう為、どこの病院が良いかこの場で決めてほしいといわれる…知らん。

浮かんだのは今一緒にいてくれた彼のお家の場所。やっぱり誰かを頼りたくなるんだ。誰にも頼らず、というか頼り方を知らずに生きてきた私でも。


まさかこんな結果とは思わなかったからもちろん一人で病院へきた。両親は埼玉におり、彼はサイパンにいる。一人で電車で帰る。すぐに頭をよぎる仲の良い友達にラインをした。がんであることを知ってもらいたくなるし、心配してもらいたくなんだと思った。

今までの私だったら確実に一人で帰れると即答する。でも今日は怖かった。恐らく、自殺をする勇気はない。体力は弱っているがゆっくりなら電車に乗って歩いて帰れる。その前に午前中勤務していた職場(病院)へ荷物を取りに行かねばならなので池上へ向かわないといけなかった。どうでもいいのに。そしてここでもバカがつくほど真面目な私は、報告をしないといけない、仕事で迷惑をかけることが一番に頭をよぎるのであった。


看護婦さんと一緒にベッドがある部屋へ移され横にはなれず、今日この病院を紹介してくれた人と母親に電話した。母親へ連絡しようかどうか少しの間迷った。また心配をかける娘。親不孝極まりないから。でも確実に手術をするという現実があるからには言わないわけにはいかない。

電話先では、外出しているようだったからまたすぐかけなおすと言われたが、遮って報告した。そして病名を伝え泣き喚いた。すぐに私の自宅のある中目黒へ向かってきてくれるとのことだった。


紹介してくれた人にも電話した。普段から私のことを心配してくれているお母さん的な存在だからやはり泣き喚いていた。


その後ベットで看護師さんの話を聞く。聞くというより聞いてもらう。とっさに聞いたことが「手術をしても子供を産めるのか」よく考えてみればわかるはずもないことはわかりきっている。でも安心したかった。

ほんの少しだけ心を落ち着かせてから受付で清算をしなければならなかった。私は今日最後の患者だった。ここでもまさかと思っていたのでお金を持ち合わせてなかったから近くのコンビニへ行きATMでお金を引き出す。1万以上した。がんですと言われたあとにこの事務的な作業を自分で行う。がんにお金がかかる。なにこれ。


帰り道。よく聞く「景色が変わる」ってこういう状態なのねと実感した。当たり前だけどここに居合わせている人はみんな生きてる。何を考えて生きてるんだろう。毎日楽しいのかな。笑ってる人、真剣な顔の人、友達同士で歩いている姿。何でもないほんとに何でもない「普通」の出来事があるという空気・存在を私は今まで無視して生きていた。

この病気は、身体を休めなさいというより「生き方を改めなさい」という合図だったと捉えた。いつも頑張ることが普通の私のことだから、これくらい大きな変化球を投げられないと気づけなかったんだと思う。


今月に入ってから体調の悪さや体の違和感をひしひしと感じていた。6月3日、目を覚ますと全身の関節が痛くて唸るほどだった。熱は測っていないが汗をかいていたので相当高かったものと思われる。それでもこれまで病院嫌いだった私は自宅で寝て過ごし1日で治した。

さらに大きな変化は「何もやる気がおきない病」。これまでは自分の仕事をする時間はわくわくしていた。やる気に満ちていたがそれがゼロになった。明日でいいやが続く。

時間になっても動けず、予定を先延ばしにしたりずらすことが増えた。


身体の疲れ方が異常。歩くペースがゆっくりになった。ゆっくりでないと歩けない。今までは走ったり、早歩きは当たり前でエスカレーターは必ず右側を使って歩いて登っていた。


そして3日前、お腹の張りがありくるくる鳴っていたけど便秘だろうと過ごしていた。トイレに行くと鮮明な赤い血が混ざっていた。何かおかしい。この直感はよく当たる。翌日初出勤を終え、内科に行き症状を伝えるも「虚血性腸炎」かもしれないとのことだった。すぐに検査する必要性はなく漢方と整腸剤を処方され、出血が続くようだったらまた来てくださいとのこと。腸を休めるために当日と翌日は絶食するように言われた。


翌朝、立ち仕事なので少しでもお腹に入れようとスムージーだけ飲み出勤した。食べていないせいか、貧血からか職場の方に顔色が悪いといわれる。2日前からの症状を話すとスタッフのうちの一人が病院を紹介してくれた。迷惑をかけると絶対に行かなかったが、様子がいつもと違うと感じていた私はここは甘えてすぐに横浜へ向かった。

ここで行かなかったら見つかってもいなかった。


chiharu
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